花の賀

 昔、東宮の女御の御殿の花の賀に

臨時に列席を命じられたときに

  花に飽かぬ嘆きはいつもせしかども 今日の今宵に似るときはなし

(花に飽きることがないという嘆きはいつもしていたけれども 

今日の花の賀の今宵以上の時はありません)

 

 東宮の女御は、古い注釈で二条后高子とされている。

 これからという未来のある東宮の、その母の女御の華やかな御殿で

花を愛でる宴が行われ、列席を求められる。

 晴れがましいと同時に、多くの身分高い、美しく着飾った女性達の中での緊張感。

特に、その中に愛する人がいたら、手が届かなくて十分満足できなくても、

見つめ見つめられる幸せがずっと続けばいいと

願うのではないか、

そういう思いも感じられる、

ある幸せな宵。

 

 

伊勢物語  2001年11月18日作成 内田美由紀