昔、東宮の女御の御殿の花の賀に
臨時に列席を命じられたときに
花に飽かぬ嘆きはいつもせしかども 今日の今宵に似るときはなし
(花に飽きることがないという嘆きはいつもしていたけれども
今日の花の賀の今宵以上の時はありません)
東宮の女御は、古い注釈で二条后高子とされている。
これからという未来のある東宮の、その母の女御の華やかな御殿で
花を愛でる宴が行われ、列席を求められる。
晴れがましいと同時に、多くの身分高い、美しく着飾った女性達の中での緊張感。
特に、その中に愛する人がいたら、手が届かなくて十分満足できなくても、
見つめ見つめられる幸せがずっと続けばいいと
願うのではないか、
そういう思いも感じられる、
ある幸せな宵。