伊勢物語について
伊勢物語とは、今から千年以上前に、それまで語り継がれてきた歌物語を
ある男の一代記に仕立てた物語です。
この男は、プレイボーイの在原業平(ありわらのなりひら)だということになっています。
九世紀の実在人物なので、物語の中には時代などつじつまの合わない話もあるのですが、
そんなことは研究者しか気にしません。
作者は不明で、中には万葉集に載っている歌もありますが、全体には業平の歌が一番多く、
伊勢物語と名づけられた最初の形は業平が作ったと考えられます。章段の増減を繰り返して、
今の百二十五段の一代記の形になりました。
源氏物語に影響を与え、源氏物語の作中にも『伊勢物語』『在五中将の日記』と呼ばれており、
紫式部のころには、伊勢物語は一代記の形をとっていたことでしょう。
内容は、男と女の愛情のあり方、友情、親子の情などをテーマに、
人の気持ちを自然とともに描く、美しい短編集です。