卒論とレポートQ&A
当HPにおいては、例年、秋から冬にかけて、
伊勢物語についての卒業論文やレポートのご相談がいくつか寄せられています。
毎年のことでもありますので、主な質問と返答をまとめて再録してみました。

質問1 伊勢物語についての論文
私は国文学科の学生です。年明けに大学に伊勢物語ついて論文を提出しなければならないのですが、一向にまとまりません。一応私も阿倍野区在住という事もあり、身近な題材をと思い117段のスミヨシとスミノエについて調べてみました。年末で図書館がしまってしまうし、混乱してます。イマイチ古文の研究の仕方が手探り状態で、いつも中途半端に終わってしまいます。私も現在片桐先生の教わっているものです。このままでは単位を落としそう・・・。
返答1
住吉と住之江、たいへんですね。片桐先生はそのへん詳しかったように記憶しています。万葉集のことをなどからめて伊勢物語の概論の授業で何度も聞きました。
論文というのは何か新しい発見がないと、先学の方々のあとをなぞることになってしまいます。研究の世界では10年前は「ほんの少し前」のことですし、20〜30年前のことも先生方は「ちょっとわすれたけれども」と言いながら、ご自分の書いたことは決して忘れておられないのです。
でもとりあえず3回生の論文でしたら、調べたことからちゃんと結論を導き出したら、可はもらえるのでは。
ただ、何に着目するかで、論文の成否の半分は決まるので、ただ身近というだけで題材を選ぶのはかえってむずかしいと思います。
ところで117段とは、なぜ第68段ではないのですか?

質問2 伊勢斎宮はどんな女性?
ただいま、大学の授業で伊勢物語 第69段狩の使いをやっております。その中で、伊勢斎宮はどんな女性かを調査しています。
第69段からも読み取ることができますが、「こんな女性」だといった決め手がありません。
どんな女性だったの?
返答2
どんな女性かというのを、注釈史で調べていらっしゃるわけではなさそうですね。まるで心理学ですね。
どんな女性か決め手が無いのは決め手が無いように描かれているのでしょう。そのほうが読者は感情移入しやすいから。
でもあえていえば、わりと従順で、そのくせ大胆で、でも引き際は心得ている人でしょう。箱入りお嬢様かな?
世間知らずって結構、天下無敵だったりするんですよね。
ただ引き際を知っているところが、ちょっと擦れているような気がして、なんとなく違和感を感じるのですが。いかがでしょうか。

質問3 伊勢物語の名前の由来
伊勢物語の名前の名前の由来について詳しい事をしっている方教えてください!
返答3
ずいぶんあせっていらしゃるご様子ですが、詳しく、とはどの程度でしょうか。
一番よく知られている説は、今の六十九段(狩の使)の段から昔は始まっていたので、伊勢斎宮のところへ行く話だから伊勢物語、というものです。顕昭も「古今集注」で、その説を引いています。
他にも、いろいろ面白い説があります。「和歌知顕集」をお読みになれるのでしたら、いいのですけれども。
翻刻は出ていますが、研究書なので、お読みになれないのでしたら、またお返事ください。

質問4 伊勢物語についての卒論
私、卒論で伊勢物語を取り上げることにしたのですが、なかなか思うように進みません。
伊勢物語で、家を出る女性について考えようと思うのですが、みなさんアドバイスなどあったらお願いします。
返答4
卒論で伊勢物語ということですが、伊勢物語は古典研究者なら、たいていの人は自分のイメージを持っていて、卒論試問などがかなり厳しかったりします。覚悟していてください。
お急ぎのことと思いますが、「伊勢物語」で女性論を論じるのは少し難しいのではないかと思います。
なぜかというと、現在の伊勢物語はどちらかといえば男性の側から見た物語なので、女性の目からは一般化しにくいからです。
「家を出る女性」について、どの段でどのように解釈するか、によっても論点は違いますが・・・
でも、それだったら、伊勢物語に絞らずにいろいろな平安時代の物語から用例を集めたほうが、説得力があると思います。

質問5 みやびについて
”みやび”について、レポートを書かなくてはならないので、誰か教えて下さい。お願いします。
返答5
久しぶりに掲示板を見たら、ご質問がありました。
昔、橋本四郎先生(万葉集と国語学の大家)に質問したら、博学の先生なのに教えてくれず、あの本とこの本を調べなさいとおっしゃっただけだったので、心の中で
「四郎ちゃん(学生は皆そう呼んでいました)のケチ!」
と思ったものでしたが、今は亡き先生の親心はわかります。
さて、ご質問の「みやび」ですが、あなたは関西の学生さんですか?
それとも関東ですか。それ以外でしたら、その課題を出された先生はどういう研究をなさっていますか?
アップルポリッシュでもごますりでもなく、相手の要求する課題、というものがあると思うのですが、みやびだけではわかりませんねえ。
実証主義なら、「みやび」の用例を物語等の索引で集めて、その意味を探求すれば、OKですが。
ちなみにみやびは「宮び」です。「鄙び」でも「里び」でもありません。では、がんばってくださいね。


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