竹取物語について 源氏物語について 住吉物語について 大鏡について 栄華物語について
『世継(の翁)が物語』という別名のある歴史物語で、大宅世継・夏山繁樹・若侍の問答座談形式で語られていますが、
司馬遷の『史記』にならって紀伝体をとっていることは、たいていの文学史の本にも載っていますね。
授業でおしえるとき、声を大にして、歴史物語はあくまでも物語であって史書ではない、と説明してい ます。
というのは、史書と比較して間違いがあるといわれているからです。
伊勢物語の写本や注釈に大鏡の引用がしばしば見られますが、伊勢物語の記述の裏を取るのに、
史書のつもりで歴史物語を引用してしているなら、ご愛嬌・・・というところ。
昔、模試や入試では、出典の御三家(あとの二つは枕草子と徒然草)のひとつであったのに、
当時の参考書では大鏡の全訳が出ていなかったので、
大学浪人時代に小学館の日本古典文学全集『大鏡』を買って、つれづれに全部読みました。
大鏡で紀伝体の「紀」の部分は、歴代天皇についてのかなり簡潔な記述なのですが、
日本史を勉強していなかったその当時の私には退屈で、誰々の女御はこの帝をうみたてまつり・・・というのにうんざりして
(女性は子供を生む道具かなにか?)読むのに難渋した記憶があります。
しかし、列伝に相当する摂政関白の挿話はおもしろく、道長の肝だめしのページはいまでも開き癖がついています。
とはいうものの、あまりに面白すぎて、「講釈師見てきたような嘘を言い」という雰囲気も漂っていますね。
大鏡は、”『大鏡』の世界”と割り切って、平安時代にしては妙に男っぽいその世界観を楽しむのも一興ではないでしょうか。
物語談義(伊勢物語 2007年10月24日作成 内田 美由紀)